「それと、さ」
春樹君の声のトーンが変わった。
「あれから姉貴、恵里ちゃんのことかなり警戒してるみたいなんだ」
警戒って……。
「歩のお隣さんで、生徒だから?」
「それもあるし、歩から恵里ちゃんと帰るって言い出したから、嫉妬してるのかも」
それくらいで?
私の嫉妬に比べれば、かわいいものじゃないか。
響子さんは歩の気持ちをがっちり掴んでいるし、体だって自由に触れられる。
「姉貴が言ってた。大事な時だったのにって」
「大事な時? どういう意味?」
確かにあの日はクリスマスだったけど、イブから十分に楽しんで、これから帰る様子だった。
一番大事なイベントは、終わっていたはず。
「わかんないけど、倦怠期なのかも」
倦怠期か。
私はいつもその時期に別れてしまっていた。
嫌な女の私は、別れてしまえばいいなんて思ってしまう。
最低……。