春樹君といえば、話題はもう決まったも同然だ。
響子さんと、歩。
「歩、怒ってなかった?」
「怒る?」
「ほら、俺が姉貴に悠を送れとか言ったからさ」
「全然大丈夫だったよ」
バスで私が潰れるまでははっきり覚えてるけど、怒っている素振りはなかったと思う。
むしろ、春樹君よりも私のほうが迷惑かけてるし……。
響子さんの手前、言えないんだけど。
「そっか。姉貴は超キレてたけどな」
苦笑いする春樹君。
家族にしか見せない顔だってあるし、想像はつく。
「なんか申し訳ないね」
「いいんだよ。親の車を自分のものみたいに乗り回してるんだし、たまには家族の役に立ってもらわないと」
あの車、親の車なんだ。
そりゃそうか、大学生であんな高そうな車なんて乗れるわけない。