「物心ついたときから、ずっとお前のことが好きだったんだ」

「あたしだって、好きだもん」

 その台詞まで読んで、私はマンガ本を閉じた。

 くだらない。

 幼馴染を好きになるなんてありえない。

 ベッドから起き上がり窓のカーテンを少し開けて、向かいに見える窓を覗いてみる。

 照らされたカーテンの左端に、丸っこくて薄い影。

 あれが、私の幼馴染。

 あんなガリベン野郎、あたしが好きになるわけない。

 カーテンを閉めて一つため息をつき、さっきのマンガ本を再び手に取る。

 人気少女マンガなんてただの妄想だ。

 リアリティに欠ける。

「少女マンガみたいな恋がしたい」

 なんて憧れる女の子がいるらしいが、このマンガならあたしはごめんだね。