上を見ると、唇を噛んで私を真っ直ぐ見つめる椿がいた。
左手で右頬に触れる椿から彼の特徴が伺える。
彼が左利きだということ。
私に触れるのはいつも左手。
大きくて細い左手が私は大好きでたまらない。
「また、だろ?母親にやられたんだろ?すごい真っ赤になってる…」
子猫を扱うように、すっと撫でる椿の左手。
その度、心臓がうるさく鳴る。
次第に速度が速くなり、そのうち煙を吹いて壊れてしまいそう。
私の変化に一番早く気づくのはいつも椿だった。
「大丈夫だよ…。こんなのいつものことだし…」
そう言ってまた笑顔を見せるが、それはすぐに消えて、涙となり頬を伝った。
もう椿の前では泣きたくないのに。
貴方に心配させたくない。
でも私は…、
椿のいない世界で生きていく自信はない…。