視界に映ったのは、愛しい貴方だった。


椿の眩しい笑顔が暗い世界から解放してくれる。


秋風が私の体を通り抜け、それと一緒に心の重たい部分もすぅっと運んでいった気がした。



「俺、妃菜子をずっと待ってたんだけど?全然来ないからすげぇ心配した。」




そう言って私の隣に座る椿。
とくん、と胸が踊った。


「ごめんね…、ちょっと色々あって」



小さく笑ってみせるが、上手く笑顔が出来ない。
あれ?笑顔の作り方、忘れちゃったのかな。


視線を緩やかな川へと向けて、込み上げてくる涙を必死に抑えた。
椿の近くにいると、自然と涙が溢れてくる。


不思議な魔法。
きっと椿にしかならないわ。こんな感情。




「なぁ、妃菜子?無理しなくていーよ。」




「え…??」




その言葉を聞いた瞬間、私の頬に何かが触れた。
柔らかくて、温かくて。


何故貴方はこんなにも温かい人なの。