弘樹は本当にいい人だった。
こんな私を一人の人間として扱ってくれて。
本当にありがとう。
クラスに向かうまで弘樹はずっと一人で話していた。
私が応えなくてもずっと話していた。
人と話すのが苦手な私にはとても有り難かった。
「無事到着しましたよ!あ…忘れてた。俺…皐を一人にしちゃったよ…」
「え?」
意味深な言葉を言う弘樹。
私はその意味がわからなかった。
「教室見てみ?あの群がってる女の子の中に皐がいるから」
弘樹が指差す方向へ視線を向ける。
そこには沢山の女の子が集まっていたのだ。
クラス全部の女の子…いや、クラス以外にもいるだろう。
どうして…こんなにも?
「皐ー!聞こえるかー?」
群衆を目掛けて声を張る弘樹。女の子の間から顔を覗かせたある人。
私は嘘だと思った。
“妃菜子に会いたい。”
テレビの番組で昔聞いたことがある。
「自分に似た人が世界に三人いる」と。
でも…まさか…。
“妃菜子は俺に会いたくないかもしれないけど、俺は会いたいんだ。”
「なんだよ、弘樹?」
私の視界に映ったのは…
椿にそっくりな人間だった。