あの散らかった部屋と顔面に傷を負った私の顔を見た刑事が気付いたのだ。
虐待は数年前からあった。
私の体と刻まれた傷がそう物語っている。


そのことがあからさまになって私は安心した。
やっと、やっと、暗い世界から抜け出すことが出来たのだと実感をした。
だけど、あなたがいない。
肝心なあなたが。



あなたがいない世界を歩いても私の存在は本当にちっぽけなもの…。



帰ってきて、つばき。




「ちょっと話を聞かせてもらえるかな?」




六畳くらいの部屋だろうか。
そこに刑事さんと向かい合って座った。
視線を下に向けると映ったものは真っ赤な液体だった。



これは誰の血?




あぁ、母親の血。



きっとこの赤い液体は私の体の中にも流れているのだろう。



そう思ったとき酷く世界を恨んだ。




神様は私にだけ幸せをくれないのだと。