どこかでまだ、夢なんじゃないかなと思う私がいたから。
でもやはり現実だった。
「犯行も君が?」
「僕が全部やりました。キッチンにあった包丁で刺しました」
冷静すぎる椿。
そんな言葉を聞いて次々と涙を流していく。
僕が、殺しました。
違います。
追い詰めたのは、私です。
「詳しくは警察署で聞くから。車に乗りなさい。」
「はい…」
刑事は椿の腕を掴み部屋から出ていく。
我慢出来ない私は震える声で呼び止めた。
「椿…!!」
椿はゆっくりと後ろを振り返り、私を真っ直ぐ見て口を動かした。
声には出さずにこう言ったのだ。
最後に…
《愛してる》
そして彼はいつもと同じ優しい笑顔で私を見つめてくれました。
視線を下に向けると、昨日母親にあげた彼岸花が真っ赤な血と同化していた。