初めてのキスは季節外れの台風の日だった。
横たわる母親の隣で。
泣きながら私たちはキスをした。
お互いを愛するように。
強く生きると誓うように。
「続きは…自由になってからしよう」
「うん…」
私たちの恋はまだ終わっていない。
罪を償ってから、本当に自由になってから…
また恋を始めよう。
…パトカーの音は家の前で止まった。
慌ただしく入ってくる警察官。先ほどまで真っ暗だった部屋は急に明るくなった。
明るくなった途端、見える世界。
赤い血はかなりの量だった。
母親の顔に目を向ける。
気持ち良さそうに眠っているように思えた。
その現場を見た警察官は言葉を失ったかのように、しばらく硬直したままだった。
「通報したのは君かな?」
一人の刑事の人が椿に近寄る。
「はい。僕です…」
椿の言葉を聞いて、やはり現実なんだと思った。