出来るだけ沢山呼びたい。

椿は残された時間まで私を愛してくれた。


あの言葉を忘れない。




「妃菜子、俺がいなくても前を向いて強く生きていけ。死にたいなんて言うな。俺はいつも妃菜子を想ってる。だから…」




私は見てしまった。
真っ暗な部屋で、テレビの光りに反射する…椿の瞳から流れる涙を…。




「でも…私……」





自信がないよ。
椿がいない世界を一人で生きていくのに。
椿がいてくれたから生きてこれたのに。




「大丈夫だから。妃菜子ならできるよ。負けるな、強く生きろ」




ぽたぽた、と流れる涙は母親の血と混ざり合った。
遠くから聞こえてくるパトカーの音。
もう時間がなかった。




「最後に…顔あげて?」




「え…?」




スローモーションになる世界。近づく椿の綺麗な顔。




そしてそっと私たちの唇は重なった。