でも私たちは子供すぎた。
要らないものを消すだけでは自由になったとは言えない。
私たちはまだ人を愛する資格などなかったんだ。
「でも…椿…」
涙で歪む視界。
冷静すぎる椿は私の手を握った。
外から聞こえてくる雨の音。
まるで二人の運命を引き裂くようだった。
「妃菜子、ごめんな。守ってやれなくて。こんなことしかできなくてごめん。どうしても妃菜子を守りたかった。妃菜子を失うのは嫌だったんだ…」
「椿と離れるのは嫌だよ…」
そんな別れの言葉なんか要らない。
私は椿が欲しい。
ずっと隣にいて欲しいの。
感じる椿の体温。
彼の手は母親の血で赤く染まっていた。
「さっき警察に電話した…。もうすぐ来ると思う…」
神様、お願いです。
椿は無実です。
私を助けてくれただけなんです。
だからどうか…
どうか―…
私たちを救ってください。