「今日は紫音は保育園に行っていて。もうすぐ迎えに行きます。それで今日はどうかしたのですか?」
私は小さく笑い、コーヒーを一口飲む。
最近慣れたんだ。
ブラックコーヒー。
保科さんもコーヒーを頼み、私を見て微笑んだ。
でもその笑顔は一瞬で消えて、唇を少し噛み何かを考えているようだった。
「…今更こんなことを言っても許してはくれないと思う…」
「えっ…どういうことです?」
すると店員が「お待たせ致しました」と保科さんが頼んだコーヒーを運んできた。
湯気の立つコーヒーは保科さんの暗い表情を映していた。
「…本当は…椿くんは自殺をしていなかったんだ…」
衝撃的すぎる真実に言葉を失う私。
まさか、そんなわけないでしょ?
だって10年前、保科さんは私に「椿くんは自殺をした」って言ったじゃない。
それに椿からもらった手紙だってある。
それは未だに大事にしまってあるのよ。
なぜ…なぜそんな嘘を?