気づいたらあれから10年が過ぎていた。
まさかこんな日をあなたと迎えられるなんて。
私は夢にも思っていなかった。
「妃菜子、綺麗だよ。綺麗すぎる」
目の前には白いタキシードを着た私の旦那様。
純白のドレスに身を包んだ私は少しだけ緊張していた。
そんな時、旦那を押し退けて控室に入ってきたのは私の最愛の…
「紫音(しおん)おいで…」
小さな旦那様。
5歳になったばかりの最愛の息子。
名前の由来はハルジオン。
春に生まれたから紫音。
この名前をつけたのは、あなた。
私は気に入ってるの。
くりっとした瞳にぷっくりした唇。
さらさらな髪の毛は淡い茶色。私に似たところは…ちょっとわがままな部分かな。
「ママ綺麗!すごぉく綺麗!!」
「ありがとう、紫音…」
結婚式をする前にあなたとの子供を授かった。
私はどうしてもこの子を産みたかった。
紫音にこの世界を生きさせてあげたかったの。
「行こうか、妃菜子」
「皐。これからも私と一緒にいてね」
ねぇ、椿。
私は強くなったかな。
今日もこの蒼い空から見守ってくれている?
でもね、最後の最後に待ちうけていたのはあなたの愛が詰まった優しさだったの。
「妃菜子、愛してるよ」
「私も…皐を愛している…」
永遠のキスで誓う。
私たちのこれからの未来を。