今日は少し遠回りしようか。
河川敷の方から帰っていく。


椿はよくここで絵を描いていたなぁと、ふと思い出した。
スケッチブックに色鉛筆。
真っ白から色鮮やかに変化していく。
「この色鉛筆ドイツ製なんだ」なんて自慢をたまにしたり。


次第に笑みがこぼれる。
椿を思うたびに。



視界に写ったもの。
遠くからでも分かる。



あなたは、彼岸花。



台風の風によって強く揺れている。



昨日の出来事が蘇った。
くしゃりと死んでいった彼岸花。
私の首を掴む母親。




「いやだ…」




思い出したくもない。
その場から逃げるように、私は家へと走っていた。




不気味な色になっていく空。




でも自分の家を見た瞬間思ったのだ。



私の家は空より不気味だと。



辺りは夜のように暗いのに、電気すらついていないからだ。
道には外灯がついているのに。




嫌な予感がしたんだ。