何度も椿と離れようとした。
でも出来なかった。
それは椿が好きだから。
無理なの。
私には椿が必要なの。
何回も同じこと言わないでよ。
「…うるさい」
「え?なんて?」
前髪の隙間から玲奈を睨む。
私はあんたより負けていない。
椿を思う気持ちは負けない、絶対に。
「私は絶対に負けない!!椿は渡さない!!」
自分でも驚いた。
まさかこんな言葉を言うなんて。
やはり今日は何かあるのかもしれない。
「生意気…!!!」
天に向かって挙げられた右手。それを見た瞬間、私は目を思いきり瞑った。
殴られたら椿に言ってやる。
でもこれは反則。
やっぱやめよう。
もし聞かれたら「ぶつかっただけ」と答えよう。
その時だった。
台風が上陸したのは。
「ただいま警報が出ました。生徒は一旦教室に入り、担任の先生の支持に従ってください」
ねぇ、椿。
私を置いていかないで。