そう優しく笑った皐は、椿に見えた。
でも目の前にいるのは椿じゃない。
皐なのだ。
数回瞬きをし、椿の残像が消えるのを待つ。




なんて言ったの?
皐が…椿に会ったって?





「もしかしたら会えないかもって思ってたからちゃんと会えて安心した。やっぱり玲奈の言う通り…怖いくらい似てた。まるで自分の分身なんじゃないかってくらい。」




「…うん…」




返す言葉が見つからない。
何だろう…この胸のざわめき。嫌なことが起こる気がする…。確か椿が母親を殺したときもこんなざわめきがあった気がする。

でも今回は何かが違う。


まだ知らない未来を見たくなかった。




「椿…すごく優しかった。初めて会う俺に嫌な顔見せずに話してくれた。妃菜子のことがすごい好きだって伝わってきた。俺は一人っ子だから兄弟のことなんて分からないけど、もし兄弟がいたらあんな感じなのかなって…」





楽しそうに笑う皐の横顔を見ていたら自然と私も笑っていた。





これから起こる破滅に気づいていないかのように。