どうして私にあんなものだけを残していなくなったのか。
どうして帰ってこないのか。


捜しても見つからないのはどうしてなのか。



私にはまだそれを受け止める余裕のある広い心はまだない。




「…ありがとう…皐…」




「俺はずっと待つから。でも妃菜子も素直になってよ。俺は妃菜子の出した答えを信じるから」




“信じる”
もう一度、皐はそう言った。
もう二度と信じてもらえないと思っていたから。
人に信用されることがどれだけ大事なのか、どれだけ難しいことなのか今回のことでよく分かった気がする。
私も皐を信じたい。
私を信じてくれるように、信じて生きていきたい。



私たちを優しく見守る月に向かって…誓う。





「…俺、妃菜子に言わなくちゃ…。今日椿に会ってきたよ」




「え…?」




「黙って行ってごめん。でも会えて良かった…」