今ようやくなんとなく分かったよ。
きっと…そうよね。




近所付き合いのないこのマンションは、住民をみても「こんにちは」の一言も言わない。
たとえエレベーターが一緒でも相手は携帯をいじるか、音楽を聴いている。
それを見る度、人間は一人なんだと感じてしまう。



やっぱり人間はいつも一人なのかな。
寂しい、悲しい、辛い。
じゃあなぜそういう感情が生まれるの?
複雑、すごく。

考えたらきりがない、きっと。



エレベーターから降りて、自分の部屋を目指す。
静まり返る廊下は、さらに人間は一人だと思わせた。
906号室。
皐の部屋だ。
私はドアの前で足を止めて、インターホンを押そうとする。
ボタンまであと数センチ。




…やめた。
きっと出てこないだろうから。



自分の部屋のドアを開けて、一人ぼっちの部屋に入る私。



私はすぐにベランダに向かった。



月が輝いているのを確認するために。