時間を止めてくださいと。

私に降り注いだのは、冷たい雨ではなく、透明な液体でもなく、生ぬるい赤色の液体だった。



生徒の会話に聞き入っていたら、前から誰かに突き飛ばされた。
よろける足取り。
行きついた場所は、茶色のグラウンド。


ゆっくりと見上げるとそこには私を睨めつけ仁王立ちしている人物がいた。



「ねぇ。まだ椿くん来てないみたいなんだけど?」



椿を愛する一人。
私のライバル。吉岡玲菜(よしおか れいな)だ。
彼女は超がつくほどのお嬢様。
たしか両親ともに会社を経営していると椿から聞いた覚えがある。
見た目も可愛いと評判で椿とお似合いカップルと噂されている。
その噂を流したのは本人なのだけれど。
椿と幼馴染の私が嫌いらしい。
だから椿がいない時を狙ってちょっかいをしてくるのだ。

私は相手になんかしないけれど。


「あんた聞いてんの?まだ椿くんが来てないっていってるでしょ?」


「知らない。今日椿と会ってないから。」


制服についた砂を祓いながらこう言った。
でも玲菜は私の言葉が気に食わなかったらしい。

さらに一歩近づいて言葉を漏らす。



「あんたたちそれでも幼馴染なわけ?相手のことなーんにも知らないじゃない。あんたみたいな汚い女、椿くんと合わないわ。」




汚い?
不釣り合い?


そんなの私が一番思っているわよ。