「知ってる?明日台風くるみたいだよ」
うん、知ってる。
椿が教えてくれたから。
確か、17号だったよね。
季節外れの台風、嫌になっちゃう。
「俺の左は妃菜子専用だから」
照れちゃうよ、やめてよ。
恥ずかしいことをそうやって簡単に言うんだもん。
「彼岸花の花言葉知ってる?」
教えてくれたよね。
素敵だなって思ったよ。
お母さんにあげたかったけど、彼岸花…死んじゃったの。
ねぇ、椿。
お願いだから置いていかないで。
私を一人にしないで。
苦しいよ、息ができない。
「あんたが消えなさい!!」
母親が生きる私に言った言葉。
もがく、もがく、もがく。
「助けて!!」
目を開けるとそこには暗闇が広がっていた。
どうやらこの世界に朝がきたようだ。
あのあと泣きつかれて寝てしまったのだ。
良かった、生きていて。