皐の温もりは体が覚えている。だからこれは違う。
冷たい。
指先が妙に冷たく感じる。
「…まだ何かあるの?」
掴んだのはリュウだ。
リュウはまだあの笑顔を見せたまま、こちらを見つめている。
「神様は…悪戯をするよ。たぶんもうすぐ。心の準備をしておいた方がいいよ?妃菜子ちゃん?」
今…なんて?
なぜ私の名前を?
どうして初めて会う人に私は名前を知られているのだろう。
皐のときもそうだった。
そしてリュウのときも。
誰が教えているの?
勝手に教えないでよ。
プライバシーの侵害だよ。
リュウの口から私の名前を聞いた瞬間、どこか気持ち悪くなった。
まだ誰かに見られてる気がして、おかしくなりそうだったから。
私は手を振りはらう。
「離して!もう私に近づかないで!」
でもリュウの言ったことは当たっていた。
神様は本当に悪戯をした。