皐は言ったよね。
周りの人が幸せになって欲しいと。
私は目の前に映る人に幸せになって欲しい。
いけませんか?
こういう考えをしてはダメですか。
胸を張れる人生を私は歩んでこなかったから、せめて未来に出逢う人たちには幸せになって欲しいです。
贅沢ですか?
そこは目を瞑ってください。
些細な願いです。
叶えてくれてもいいですよね?
ねぇ、神様。
教室に戻ると、もうそこには小絵と弘樹がいた。
まだ授業の始まる前で生徒たちは各々の時間を過ごしていた。
「弘樹、もう戻ってきたのかよ?」
「皐!お前いきなり何すんだよ!!」
あ、弘樹くん顔がまだ赤い。
まだゆでダコだ。
「で?どうなったの?」
皐は自分の席に座り、弘樹と小絵を交互に見つめる。
私も席に着いて二人を見上げた。
そこには同じ顔をした少年少女が照れ臭そうに笑っていた。