音が鳴ると、次は熱が身体中に帯びていく。
そして顔がリンゴのように赤くなるのだ。
でも私はそれをバレないように下を向く。
こんな姿、見せられない。
「俺、バイト終わったあとに一人で夕飯食べてるんだけど寂しくてさ。隣にいてくれるだけでいいんだ。」
「…でも明日は…彼氏と…」
「俺もバイトあるから夜中になるし…嫌じゃなかったら俺ん家来て。妃菜子が好きな人参入り焼きそば作って待ってるから」
皐の言葉に私は素直に首を縦に振っていた。
嫌だったら…行かなくてもいいだけだ。
嫌じゃなかったら…行けばいい。
これ以上、皐を悲しませたくなかった。
皐のあんな悲しそうな顔は見たくない。
皐が悲しい表情だと椿もそういう表情をしているかもしれないと思ってしまうから。
私は目の前にいる人を幸せにしてあげたい。