皐はずるい。
弱っている私を引き寄せたり、冷たく付き離したり。
そういうことをされるから分からなくなるんだよ。
どうして?
どうして私ばかりにかまうの?
涙が出るよ。
涙が出るくらいあなたがわからない。
一向に縮まらないこの距離をいつまで保つのか。
それはきっと神様だけが知っている。
いつも私の先を歩く皐は何を感じて、何を思って歩いているのだろう。
私ばかりあなたの背中を見ながら歩いて。
たまには私の後ろを歩いてみてよ。
そうしたらあなたの気持ちが分かるかもしれないから。
「あのさ、妃菜子。」
「えっなに?」
するといきなり皐は歩くのをやめてこちらを向いた。
私はどうしても皐の顔を見ることができない。
まだ掴まれた腕が熱いし…それに…胸が痛い。
「明日一緒に夕飯食べて?」
「…な…んで?」
ほら、また…
とくんと胸が弾んだ。