思考回路遮断。



何も言えない。
私は言う資格なんてないし、どう思ってるかなんて…わかるわけないよ。





「離して、教室戻るから」




振りはらおうとしても掴む力が強くて離せない。

意外と力あるようね。
もっと弱いかと思っていた。




「言ってよ。俺の幸せは妃菜子にかかってるんだ。」




何よ、それ。
さっきは幸せになれなくていいって言ってたじゃない。
私の言葉で皐の幸せが決まるの?本当にそれでいいの?



でも私は…




あなたを幸せにできるくらい心に余裕がないの。






「明日…彼氏と会うの。ちゃんと言うつもり。彼氏に“好き”って。私の心には彼氏しかいないから」




この時だけは皐の瞳を見てちゃんと言った。
逃げないように。
自分の気持ちに嘘をつかないように。




「…分かった。引き止めてごめん。教室行こ…」





でもなぜそんな悲しい顔をするの?




自分の言った言葉に後悔しそうになる。
でも…これでいい。
間違ってなんかいない。





きっと…きっと。





私の心には椿だけ。