言葉が浮かんでこない。
「…何で?」
「ただ気になっただけ。妃菜子は俺のことなんてどうでもいいんだね。」
「そんなこと誰も言ってないじゃない」
「じゃあさ…!!」
すると皐は私の腕を掴み、壁へと押し付けた。
…痛い。
背中が痛いよ。
今は授業中なのか、誰一人と廊下にいない。
だから私がこんな状況におかれているのも誰も知るはずがない。
痛いという感情を知っているのはそうした皐だけ。
「痛い…」
「俺昨日ずっと待ってた。妃菜子から連絡あるかなって。だから頑張ってバイトして…バイトが早く終わらないかなって思ってた。でも…なかった。」
皐の瞳を見ることが出来ない。だから私は視線を反らした。
真っ直ぐな瞳を見たら吸い込まれそうだったから。
「…俺のことどう思ってんの?」