なぜ皐は幸せにならなくていいと言ったのだろう。
幸せになりたい人間はこの世界に幾らでもいるのに、なぜ皐はその逆を望んだのだろう。
胸が締め付けられた。
皐が遠く感じた。
「さっき言っただろ?幸せになってもらいたい奴の話。今日だって小絵が心配で見に来てる。ほら、あそこ。」
皐はこう言って私たちの方を指差した。
やっぱりバレていたか。
「バレたか…」
弘樹が言葉を溢す。
違いますよ?
最初からバレていたのです。
「ひ…弘樹!?…妃菜子ちゃん?」」
小絵が気付いた瞬間、恥ずかしくてたまらなかった。
建物の陰から見つからないように見る私たちの姿は他人から見たら滑稽だっただろう。
そう考えたら穴があったら入りたい気分だった。
「小絵は知ってるか?弘樹は俺よりすげぇ優しいってこと。俺はお前らお似合いだと思うけど?」