流れる時間が、この時は不気味なほどゆっくりだった。
それとも息をするのすら忘れてしまうくらい高速スピードだったか。


私にはそれが解明できない。


ぎこちない距離感はそのまま。何も変わっていない。




「俺さ、ある奴に幸せになって欲しいんだ。そいつは俺のこと消えてもらいたいくらい憎んでると思う。でもずっと一緒にいてくれるんだ。」





「え?」





「それってさ、すげぇ心の広い奴か優しい奴しかできないことだと思う。正直、俺は小絵が思ってるほど優しくないし、頼りもない。自己中だし、ワガママだし、人に話せない辛い過去もある。」





そう語る皐が寂しそうに見えた。
孤独に必死に耐える子供に見えた。




「皐…何言ってるんだ?」




弘樹が首を傾げて、二人を見つめる。
私は皐の話が耳を塞ぎたくなるくらい辛い話に聞こえてしょうがなかった。