神様が描いた運命を素直に受け止められるくらい、広い心を持っていたら、私は強く生きていけるのでしょうか。
やっぱり私は誰かの温もりがないと生きていけない。
建物の陰から二人を見る。
ぎこちない距離感が覗く私たちも不安にさせる。
覗くなんて卑怯だよね。
でも私も不安だったんだ。
多分一番不安なのは目の前にいる弘樹の方だ。
答えはひとつ。
目の前で好きな人を奪われるか。
目の前で好きな人が泣き崩れるか。
運命は、あと少しで訪れる。
「あ…あたし、ずっとね?皐が好きだったんだ」
揺れる木々。
葉っぱの息を吸い込んだ風が私たちを吹き抜ける。
それは命の香りがした。
「小絵は俺のどこが好きなの?」
告白されたのに顔色を一つ変えずに、小絵に向かってこう言った皐。
弘樹の背中に手を触れる。
そこからは確かに温もりがあった。