それは言葉が出ないくらい美しかった。
久しぶりに見たと思う。
ずっとカーテンを閉めたままだったから。


言葉を失った。
何て言い表せたらいいのだろうと必死になって考えていた。




「…きれ…い」



「だろ?奈月が言うことは本当だからさ」




苦しい、苦しいよ。
蘇る過去。
私はこの月を見てあることを思い出した。



椿もそうだった。
私に元気がないときいつも夜中河川敷に連れていってくれた。そして月を見つめて将来について語っていた。
椿の話す未来に私がいたから、私は安心して笑顔になるの。



なぜ、皐も椿と同じことをするの?



丸い月がだんだん変形していく。


歪む世界。
滲む黄色。




無性に会いたくなった。




やっぱり、やっぱり…
私に必要な魔法は…
「椿に会いに行く」という魔法かもしれない。





「会いたいよ…」