椿に伝わっていたかな。
「好きだよ」と、「愛しているよ」と。
握られた手を、抱きしめられた腕を、何も言わずに握り返したり、抱きしめ返したりするのは、気持ちを伝えているうちに入らない。
声を出して気持ちを伝えてやっと、繋がるのだ。
私は随分と勘違いをしていた。

それに気づかせてくれたのは、あなただった。


弱っている私の中に勝手に入ってきて、庭を汚す犬のように、私の中を荒らしていったね。
でも恨んではいないのよ。
私を救ってくれたから。



「妃菜子は時々照れること言うね。嬉しいけど」


いつの間にか椿の顔は真っ赤になっていた。
耳まで赤くする彼を愛しいと感じる。


本当だよ、ずっと一緒にいたいもの。


「嘘じゃないよ。全部なくなればいいのに。椿と二人がいい。」


「俺もだよ。」


そう言って私の手を握る手が強くなった。
薄暗い雲が広がっていく。
神様がいなくなった瞬間だった。


私たちの運命の歯車が徐々に狂っていく。


この大きな背中の残像を追って、私は生きていく。


あなたは私に「生きる」ことを教えてくれたから。