「みんな皐に夢中でね?誰よりも早く仲良くなろうと必死だった。ある学年一の美少女が皐を狙ってね、付き合うのは時間の問題って感じで。秒読みだった。でも突然壊れたの」
「なん…で?」
ごくん、と息を飲み、小絵の口元に釘付けになる。
そのぷっくりとした口から次は一体どんな言葉が出るの?
興味深々に聞く。
「女の子が聞きすぎたの。皐のことを。住んでる場所とか家のこととか、あと…メールアドレスとか。そしたらね、皐怒っちゃって。それからその女の子とは一切口を聞かなくなってさ。みんなは気付いたの。皐と仲良くなりたいのなら皐のことを聞かないって」
「でも…入学式のとき…メアド聞かれてたよ…?」
小さな声でこう言うと小絵はショップバックの中に制服を畳み入れた。
そして長い髪の毛をポニーテールにする。
艶やかな髪の毛からはほんのりとフローラルな匂いがした。