小絵の言っている意味を理解しようとした。
私も思うよ。
皐には他人にはない空気があるって。
見えないオーラっていうのかな。
不思議な空間にいるような錯覚に陥る。



私も体操服に着替えていく。
昔の傷を見えないように慎重に。
まだ残っているから。
お母さんが殴った痕が。




「…たとえば?」




「妃菜子ちゃんには言っておこうかなぁ…」



「うん、ちゃんと聞くよ?」




小絵は私の瞳を見て何かを決心するかのように息を吸った。




「皐はね、自分のことを聞かれるのが大嫌いなの。去年…皐が中学校に転校してきたとき大騒ぎだったのね。王子様がやってきたって。あたしも皐を見たとき王子様だって思った。一目惚れだったの」




ざわつく更衣室。
いろいろな匂いが混ざる。
香水の匂い、シャンプーの匂い、ガムの匂い、お菓子の匂い。

人間の匂い。