ありがとう。
あなたに言いたいけどまだ恥ずかしくて言えないの。
必ずいつか言うから待っていてね…。




「あ、一限体育じゃん!妃菜子ちゃん、更衣室行こ?」



小絵は体操服の入ったショップバックを持ち私の腕を掴んだ。


「待って、鞄置いてくから」



鞄を机に起き、体操服を持つ。真っ白な下ろし立ての体操服は清潔さを表していた。
弘樹に「またね」と言い教室を出ていく。
体育の授業は1組3組7組の合同で行われる。
広く作られた更衣室はあっという間に人で埋まってしまうのだった。



「皐、早く来ないかなぁ…」



並んで歩く私たち。
そんなとき突然小絵が呟いた。それを聞いたら胸の奥がちくりと痛んだ。

昨日のこと…聞かないのかな?
本当は気になっているのでしょう?

でも聞かないで。


知られたくないから。
知ったら小絵はきっと傷つくだろうから。
あなたが見た光景は夢だよ、と心の中で呪文のように唱えた。