祈っているよ。
二人が幸せになるのを。
「おはよ、小絵」
「おはよぉ。なんだ弘樹かぁ…皐今日も遅刻かなぁー…」
グラウンドを見つめる先には皐はいない。
遅刻魔ともっぱらの噂の皐は今日も遅刻だろう。
そっちの方が都合がいい。
心の準備が出来るから。
「あ、妃菜子ちゃんおはよう。」
「え…?」
今小絵さん何て言った?
私のこと名前で呼んだ?
「花本さんって何か堅いじゃない?だから妃菜子ちゃんって呼ぶね。皐も弘樹も名前で呼んでるしさ。だからあたしのことも名前で呼んでね」
にこっと可愛い笑顔を見せられたら嬉しさ倍増だよ。
女の子にそう呼ばれたのはいつぶりかな。
いつも“アイツ”とか“椿と釣り合わない人”とかそんな汚い呼び名ばかりだったから。
なんか新鮮だった。
「うん、ありがとう…。小絵ちゃんって呼ぶね…」
「仲良くしようね!」
友達なんか要らないと思っていた。
必要ない存在だと思っていたから。
でも人間の大切さを教えてくれたのは、生きる意味を教えてくれたのは、すべてあなただった。