「弘樹くんはそれで良かったの?皐を見てて腹が立たなかった?好きな人を奪われて嫌じゃなかったの?」



「嫌だったよ。かなりね。でも前さ聞いちゃって」



「何を?」



いつの間にか学校に着いていた。
話しに夢中で周りが見えていなかったのだ。
靴を履き替え、教室に向かう。


「卒業式のとき元カノが皐に告白してるのを。覗くつもりじゃなかったんだ。ほんとにたまたま見ちゃってさ」




「うん…それで?」




「皐が元カノにこう言ったんだ。『今まで俺がお前と仲良くしてやったのは弘樹を悲しませないため。俺がお前を突き放したら弘樹は泣くだろうから。アイツ根が優しいからお前が俺のとこ来ても何も言わなかっただろ?それに気づいてないお前は馬鹿だよ。あんなに優しい奴は他にいない』って」





息が止まった。
皐は周りの心情をちゃんと見ているんだ。
弘樹を大事にしているんだ。
そういえば弘樹が前に言ってたっけ。
転校してきた当初、皐は一人ぼっちだったって。
そんなとき話しかけたのは弘樹だった。


だから大事にしているんだ。