私の隣で必死にあたふたする弘樹がどこか可愛く見える。
顔を真っ赤に染めちゃってさ。ゆで蛸みたい。
絵に書くような可愛い蛸みたい。
照らし合わせてみたらあまりにもそっくりで笑えてしまった。
「ちょっと妃菜子ちゃん何笑ってるの?気づいてたなら言ってよー…」
「ごめんごめん。すごく分かりやすかったよ。いつから好きなの?」
「ほんとに恥ずかしい…。んーっと幼稚園くらいからずっと。俺と小絵、幼なじみみたいなもんでさ。小さい頃から小絵が好きだったんだけど言えなくて。そしたら奪われたわけ」
雑音が消える。
弘樹の声で何もかも消えていく。
道を歩く人や死んで間もない桜の花びらとか。
映るのは潤んだ瞳でこちらを見る弘樹だった。
小絵さんの心を奪ったのは?
頭をよぎっていく。
頬を伝う涙。
唇の感触。
一途な想い。
きっと皐だ。