「そっかぁ…そうなんだ。昨日さ、小絵が変なこと言っててさぁ。二人が手を繋いで学校から出ていったって」
私の顔を見ずに弘樹はただ真っ直ぐ視線を向けてこう言った。その言葉を聞いた私の体は震えだしたのだ。
え…もしかして見られていた?
確かに小絵さんの席はグラウンドの見える窓際だ。
そして私の前の席となる。
ちょっと待って。
小絵さんに見られていたのなら…まずい気がする。
どうしよう。
余計弘樹の顔が見れない。
「妃菜子ちゃんは…彼氏いたよね?」
…どくん。
何、この感情。
心臓の音は昨日皐にキスをされたときと似ているのに、何かが違う。
あの事情聴取に似てる。
逃げ出したい。
でも…デキナイ。
「…えっと…」
なんて言えばいいの?
言い訳をしていいの?
皐にそうしてって言われたからしただけって言えば信じてもらえるの?
「…俺、小絵の哀しい顔見たくないんだ。」