「あ、彼岸花だ。」
突然、椿は土手の方へと歩みより、そこに咲いていた紅い花を指差した。
秋によく見る花。
秋のお彼岸の時に咲く花。
真っ赤な花には不気味さが漂っていた。
「妃菜子、彼岸花の花言葉って知ってる?」
「ううん、知らない」
花言葉なんて興味がないもの。首を横に振って椿を見上げた。
「想うのはあなた一人っていうんだって。」
とくん。
この言葉を聞いた瞬間胸が弾んだ。
甘い声でそんなこと言われたら、誰だってそうなるよ。
「なんか想像つかないね。怖いイメージしかないから…」
空に向かって真っ直ぐに咲く紅い花は、まるで世界を反発しているよう。
そう思った私もきっとどこかで反発しているのだろう。
「俺は彼岸花好きだよ。こんなに綺麗なのに何で誰も摘まないのかな…」
椿の言葉でふとあることを思い出した。
「今日…お母さんの誕生日だ…」