写真の中の世界から現実の世界へ引き戻されたのは、学校に鐘の音が鳴ったときだった。
これはきっと授業が終わったチャイムだろう。
この音を聞くのは屋上へ来て二回目だから。
アスファルトに座りながら聞いていた私の体に、太陽の熱が伝わってくる。
感じるのはその温もりだけだった。
目の前で泣きながら話す皐を私はずっと見ていた。
頬を伝って流れる涙がとても綺麗だった。
落ちた滴はアスファルトを水玉模様にしていく。
人の泣き顔はなぜこんなにも美しいのだろう。
そう、皐を見て思った。
皐の過去が私と似ているなんて言えもしない。
でもこれだけは言わせて。
奈月さんの精一杯の気持ちを皐に伝えたい。
奈月さん、いいですか?
勝手にごめんなさい。
でも伝わらないままなのは私が嫌なんです。
私も椿から教えてもらったから。
彼岸花の花言葉。