奈月の家に着いたときはもう遅かった。
目の前に広がる騒然とした光景。
この現場、ニュースで見たことある。
数台のパトカーと救急車、そして野次馬たち。
額から流れる汗を制服で拭い、一歩一歩近づく。
「被害に遭ったのは池内さんの娘さんらしいわよ…」
隣で会話をしていた叔母さんの言葉が耳に入ってくる。
「…奈月?」
野次馬の中に駆け寄り、間を割っていく。
そこには信じられない光景が広がっていた。
足元に流れる赤い血。
横たわる人間から流れていた。
太陽の光で反射するナイフ。
刃渡り30センチほどだろうか。魚をさばく包丁に似ていた。
「え…」
地面に倒れて眠っていたのは…奈月だった。
真っ白なセーラー服は真っ赤に染まり、口からも血を流していた。
嘘だろ?
なぁ…嘘だって言えよ…
「奈月!!奈月!!」
警察官を押しきり、奈月へと近づく。
「こら、現場に入ってはだめだ!!」
現場?馬鹿言うなよ。
こいつは俺の…。