「…奈月?」
聞こえていなかったのか。
名前を呼んでも反応がない。
俺はもう一度呼んで、肩に触れた。
すると奈月はびくりと反応し慌てて俺を見上げた。
「あ、ごめん!考え事してた…」
「いや、大丈夫だよ。帰ろっか。」
「うん…」
小さく頷いて席を立つ奈月。
やっぱり何かあったのかな?
いつもより…暗い。
でも俺が聞いたところで話してくれるか?
二人並んで慣れた道を歩いていく。
元気のない奈月は案の定口数が少なかった。
明日は一緒に過ごすクリスマスなのに。
俺と過ごしたくないのかな?
あんまり考えたくない。
さっきまでうかれていた気分が下がっていく。
奈月は何を考えているの?
俺は奈月の心に踏み込んではいけない?
荒らしたりなんかしないから。
「皐、これ預かってもらえる?明日持っていくの忘れたら嫌だから。」
そう言って渡したのは黒い革のケースに入ったデジカメだ。