椿は時々恥ずかしいことを言うものだから、心が準備できていなくて倒れそうになる。



貴方の得意技ね。



「一緒の高校に行ってもいいの?」




「約束しただろ?」



もしかして覚えているの?
あの約束。



中学一年生頃、高校生の人を見てある約束した。
「同じ高校に行こう」と。
どんどん大人になっていく椿はそんな約束なんて忘れていると思っていた。
だから言い出せなかった。
勝手な自惚れだと笑われそうだったから。


でも覚えていてくれたようだね。




「私ね、あの制服が着たい。天城(てんじょう)高校の。ブレザーにチェックのスカート。可愛いじゃない?」



笑顔で椿の瞳を見つめながらこう言うと、椿は優しく笑ってくれた。




「妃菜子が着たらきっと可愛いんだろうな。一緒に頑張ろうか、天城高校」




ぽっと頬が赤くなる。



まるで河川敷にひっそりと咲く彼岸花のように。