「買った理由は欲しかったから。あのね、皐…二人で写真撮らない?まだ一枚もこのカメラで撮ってないの。最初に撮るのは皐とのツーショットって決めてたんだぁ…」



エクボを見せながら、カメラを操作する奈月。
そんな奈月が可愛くて思わず抱きしめたくなる。


だめだ、耐えろ俺。
そう心の中の自分に訴えかけた。



「いいけど…なんか照れる」




「いいじゃん!記念に!ね?近寄って?」



奈月は俺の腕を引っ張り自分へと近づけた。
カメラのレンズが俺たちを覗く。
ワインレッドのカメラがどこかあの彼岸花によく似ていた。


さっきまで俺たちの距離は1メートル余りあった。
でも今は頬と頬がぶつかるくらい…近距離。


どうかお願い。
心臓がもちますように。




「皐、笑ってね」




次の瞬間、俺たちは真っ白な光に包まれた。