「痩せたかな?ダイエットしてるの」
こう笑いながら教科書を鞄にしまっていく奈月。
そう言われたのなら納得するしかない。
「ふーん。ダイエットする必要ないじゃん。帰ろ、暗くなってきたし」
冬の太陽は沈むのが早い。
俺たちは夕方5時頃学校を出た。
「皐、お願いがあるの。私ね、昨日デジカメ買ったんだ。」
奈月は鞄の中からワインレッドのコンパクトデジカメを取り出し、俺に見せてきた。
「最新型なの」と言って電源を入れる。
一体そんな本体の中にレンズが入っているんだと思わせるくらい、それは薄かった。
「そうなんだ?何で買ったの?」
今思えば、これが奈月の最初で最後の“助けて”のサインだったんだ。
痩せた体。やつれた肩幅。
いきなり買ったと言ってみせたデジカメ。
理由は…
俺が後悔したあとに知ったんだ。