何でもっと素直になれないのだろう。
どうしてこんなにも不器用なのだろう。



素直に気持ちをぶつけられたら。


俺は知らなかったんだ。
神様だけが知っていたんだ。

俺たちの運命を。
決められた運命を。


何故教えてくれなかったの?
そうしたら俺は後悔をしなかったのに。




「…皐?何で怒ってるの?」





理由?
そんなのお前が好きだからに決まってるだろ。


でもそんなことを言える勇気を持っていない俺は机に握っていたシャープペンシルを叩きつけた。
どんっという音は教室中に響き渡る。




「うるさい。もういいから、俺に構うな」




「…分かった」




小さな声でこう言った奈月は俺から離れていった。
きっと教室から出て行っただろう。
足音がそう聞こえた。




「なんだよ皐。夫婦喧嘩か?」



そんな光景を見ていたクラスメートが茶化してくる。




「うるせぇよ」





むかつく、むかつく。


世界にいるのは俺と奈月だけでいいのに。