だけど信じて欲しい。
私は貴方を愛していた。
まだ子供だったけど、ちゃんと貴方を全力で愛していた。
北風が吹くと肌がぶるっと震える。
冬の匂いを感じた。
もしかしたら、もうそこまで来ているのかも。
でも季節外れの台風のほうが先か。
右手が熱い。
そこから伝わる体温が寒いと訴える体を温めていく。
椿のおかげだ。
私の体を何も言わずに温めていってくれる。
「妃菜子?高校決めた?」
突然、椿は前を向きながらこう聞いてきた。
そっか。もうそろそろ志望校を決めなくちゃ。
中学三年生のこの時期には既に決まっていなくてはならない。
でも高校になんか興味がなかった。
「まだ、なにも…。椿は?」
「どっかの誰かさんと同じ高校に通いたいのに、どっかの誰かさんはちっとも決めないから困ってるんですけど?」
そう笑いながら言って、私の手を握る椿の握力が強くなった。
また愛しさが芽生える。