出逢った数日だけど、みんなが騒ぐ理由分かったよ。
奈月は生きているもの全てに優しかった。
「せっかく花係になったから、花を好きになって欲しいな!」
満面の笑みを見せる奈月。
屈託のないその笑顔が俺の体を熱くさせた。
何だよ、この感情。
初めてで分からない。
「う…うん、分かった。」
「約束ね?ねぇ…皐って呼んでもいい?みんな“くん”付けでしょ?みんなと同じは嫌だから…私だけ呼び捨てがいい。…ダメかな?」
髪の毛を耳にかけながら、照れた表情を見せる奈月。
小さくはにかんだ姿を見て俺は完全にノックアウト。
殺られたよ、その笑顔。
「別にいいよ…」
「ありがとう。私のことは奈月でいいからね。教室…戻ろっか」
それは秋晴れの日だった。
青く透き通った空に浮かぶ太陽が俺たちを見守ってくれていた。
はずだったのに…
俺は本当に馬鹿だった。
奈月を守ってあげることもできない無力な人間だったんだ。