黒板を目にした亮の表情が強張る。
「なんだよ、これ」
「亮さー」
赤沢早苗は愉快そうに亮に向き直る。
「桃振って高橋さんにいくとか、正気なわけ?」
「いくら何でも趣味悪すぎでしょ!!」
一つ一つの言葉が針となって私の胸を刺す。下品な笑い声が、耳障りだ。
私は、何を言われてもいいよ。でも、亮には。
「それともまさかさあ〜、亮って、ブス専!?」
「あはははは!!確かに!!」
きつく拳を握り締める。いたたまれなくなって、私は教室を飛び出した。
「うわ、なんだよ!!」
何度も人とぶつかりながら、私は走った。足がもつれても、転びそうになっても、必死で。下駄箱まで来て、靴を履き替える。外は土砂降りの雨だ。それでも構わず、私は重たい空の下に駆け出した。