「俺、桃に告られて付き合いだしたんだけど、本当に好きには、なれなかった」

「……うん」

「桃はすっげえいい奴だったよ。でもやっぱりダメで。このままじゃいけないって思って……『夏休みどこ行こっか』って楽しそうに計画立てる桃に、『別れよ』って、言った」

「……」

「最低だよな、俺……」

私の脳裏に、あの日の西田桃の寂しげな表情が浮かぶ。

――最低だ、私。少しでも、期待してしまってた。

亮は西田桃を傷付けたことで、傷付いていた。

亮の肩が、微かに震えている。

亮はいつも元気で、明るくて……こんな辛そうな姿、初めて見た。

私は、何を、言ってあげればいいんだろう。

私はいつも、亮に助けて貰ってばっかりで、与えて貰う、ばっかりで。好きな人が苦しんでいるっていうのに、どうすることも出来ない。私はなんて、無力なんだろう。

花火は不規則に私達を照らしては、消えていく。

私は、花火を見るふりして、何度も横目で亮を見てみたけど、その顔は陰になっていて、表情はよくわからなかった。